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ミュージカル「リボンの騎士」

更新日時:2015年11月17日

テーマ: お知らせ

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なかよし60周年記念公演 ミュージカル「リボンの騎士」を見に行ってきました。

今日が東京での千秋楽だったわけですが、自分はそれには行けず…

ですが、それ以外で2回見に行くことができ、1回目はポストカード(ヘケート/ブラッド)をゲットし、2回目はお見送り回だったので一応満足しています。

 

ところで、このミュージカルは乃木坂46からは、生田絵梨花、桜井玲香の二人しか出演していないので、見に行っていないという人も結構いるかもしれません。

ですが!

この公演、終わってしまったのは東京公演だけで、12月3日からは大阪のシアターBRAVAでまた見ることができます。ということでこの記事を読んでぜひ見てみたい!と思った方は、まだチャンスが有りますよ!笑

 

※ネタバレがあるかもしれない(ネタバレと解釈される可能性がある)ので注意していただきたいのですが、仮に内容をまったく知っていたとして面白さが少しでも減るようなことはない舞台であるとは思います

 

ということで本題に入りますが、まずいちばんに言えることは、俳優陣の能力の高さに尽きると思います。なかでも、根本正勝さん演じるナイロン卿は見れば見るほど惹きつけられる魅力を放っていましたし、青木玄徳さんによる海賊ブラッドのセクシーさには、男性である私でも見とれてしまうほどでした。

とはいえやはり、というか乃木坂ファンであるからかもしれませんが、全編を通じて聞くことのできる生田さん(サファイア役)の歌声は圧倒的です。

 

ずっとこの声を聞いていたい…

 

と思うわけなのですが、その高音の素晴らしさに反し低音だと苦しそうな場面も少なくはなかったのも事実です。

男と女の心を併せ持つという役どころである以上、かなり大変なところではありますが、ここはミュージカル、やはりセリフとして聞き取りづらいというのは難点です。

とはいえ、実際に男と女のスイッチを持っているのではないかと思わされるほどに生田さんの演技は自然で、むずかしい設定を果敢にこなしていたという印象です。主役なので登場シーンも多く、良かったところを上げればきりがないのですが、しいて言うなら一幕ラストの「名も無き騎士として立ち上がる」のシーンでしょう。もちろん重要なシーンではありますが、彼女の凛々しい立ち姿はもはや崇高さを感じさせるものがありました。普段から姿勢の良い生田さんらしいといえば彼女らしいところが印象にのこったということでしょうか。

 

さて、乃木坂からのもう一人のキャスト、桜井さん(ヘケート役)の話もしましょう。

ヘケートについて言えることは登場シーンから衝撃的だということでしょうか笑

それまでの曲とは一転してロック調のナンバーがかかり、踊り狂う悪魔の手下たちともに登場するヘケート。ヴィジュアルイメージ公開当初からその奇抜な衣装が注目されていましたが、実物を目にするとそれ以上のインパクト。実際の舞台上では長い髪の毛をリボンのかたちに結わえていて、大きな赤いリボンがトレードマークであるサファイアと好対照をなしているといえるでしょう。そしてやはり安定の歌声。本日二度目のこれです。

 

ずっとこの声を聞いていたい…

 

登場後はサファイアとのやり取りがあるのですが、そこでのややオーヴァーなリアクションも「悪魔の娘」っぽさがうまく出ていたのかもしれません。ちょっとくどいかなという節はなくはなかったのですが。それでも彼女のころころと変化する表情とセリフ回しの滑らかさは、「すべての犬は天国へ行く」でキキ役を熱演していた桜井玲香を髣髴とさせるものです。まったくもって役柄は違うにもかかわらず、舞台を目撃している観客に強烈な印象を残す、というのは彼女の演技の持ち味なのかもしれません。

 

そんなこんなで一幕が終了し、小休憩。二幕が始まるのですが、わたしはここで大変な思い違いをしていたことに気づきます。

それはこれです。

 

うたのおねえさんってすごいんだな…

 

そう、NHK「おかあさんといっしょ」でかつて「うたのおねえさん」を務めていた、はいだしょうこさん(ヘル夫人役)です。キャストが発表されたとき、彼女のことはほぼ意識していませんでした。なにしろ私ははいださん世代ではないし(茂森あゆみおねえさん世代です)、ちょっと変わった絵を描く人くらいの印象しかなかったのですから。

ですが、その抜群の歌唱力の前に私はなすすべもなくひれ伏すことになりました(もとから何か為す術があるわけではないのですけれど)。

鳥肌が立ちました。思いました。

 

ずっとこの声を聞かせてください、お願いします…

 

格が違います。桜井さんもたしかに上手いのだけれど、はいださんとの掛け合いではだれが見ても次元が違うということがわかってしまいます。それでも精一杯食らいついていたということを評価したいとは思います。もちろん舞台としては成立していたし、母娘という関係性を加味すればあれでも充分アリでしょう。ただ、やはり壁は厚い。その壁と戦ったという今回の経験は、桜井さんの今後の成長の糧になっているはずです、きっと。

 

とまあこんなわけで、役者同士の切磋琢磨というか、少なくとも乃木坂ファンから見ればいい経験をさせていただけた舞台であったとは言えるわけですが、内容的には疑問が残る部分もあることは否定できません。というか見た方はあまり満足していないのではないでしょうか。もちろん勧善懲悪による大団円という構図そのものは幼稚と言ってしまえばそれで終わってしまうものです。ですが、ある程度好意的に解釈してみましょう。

とはいえそもそもミュージカルである以上、多少のプロットの飛躍に目くじらを立てるつもりはありませんし、そんなことはナンセンスです。話の筋なんてのはだいたいわかったうえで見るってものです。問題は、手塚治虫の「リボンの騎士」を今焼きなおすということの意味です。

「男装の麗人」というクリシェを確立させた本作の最大のポイントは「男の心と女の心を同時に持つ」というその点につきます。このSF的設定は他の作品ではあまり見られない特徴です。もちろん人々は「ふつう」男か女の心どちらかを持っている、などという考えがかなり古臭いものであることはだれが見てもわかることでしょう。しかし、取り出されるはずの「男の心」は結局取り出されない。そのままのものとして受け入れられる。脚本の浅井さやか氏はパンフレットで「あなたは……サファイアを見守る一人」になると言っていますが、むしろ「あなた自身がサファイア」であり得る要素を強くはらんでいるはずです。サファイアはあくまで「異質な他者」でしかありえないのでしょうか。

ラストの「結婚式」のシーンでの、サファイアとフランツの身振りは象徴的です。フランツがサファイアに膝枕してもらおうとするのを彼女は拒否し、サファイアはフランツの膝に腕を乗せて堂々と座る。めでたしめでたしのラストシーンですが、観客はこの光景を見て、不思議に微笑むことでしょう。というのも、このシーンはそれまでの擬古典的な舞台空間から隔絶され、「われわれの側」に位置する出来事であるかのように映るからです。ある種の緊張の糸がほぐれる光景が描き出されることによって、いままでみてきた演劇が「演劇であることを認識する」という異化効果に直面すると言ってしまってもいいかもしれません。

本作は徹底的に擬古典的、むしろ19世紀的な中世趣味の再反映であると考えれば擬-擬古典主義でしょうか。そうした要素が各所に散らばっています。そもそもなぜ「騎士」であるのか。それは中世の騎士物語がベースにあるからにほかなりませんし、一方で権力をめぐる政治劇や隣国に逃げこむような構図はリア王をも想起させるかもしれません。それでいてつねに「国民」という近代的主体が言及されることは不自然であるとすら映るかもしれません。しかし、そうした古典的文脈やそこから生じるある種の滑稽さをこれでもかと詰め込んでしまうことによって、かえって「現代」という時代が意識されることになります。それは神様がはじめと終わりで示唆していることからもわかるでしょう。

そこでではジェンダーをどう捉えるか、「男らしさ」「女らしさ」とは何か、そんなものはあるのか。それらに答えを出すことはなく、すくなくともサファイアの事例においてはそれをそのままでas it is良しとする。物語全体に漂うある種の釈然としなさは、このように問いが開かれているという部分に端を発しているのであり、その事自体を批判することにさほど意味はないでしょう。惜しむらくはこのことについてヘルとヘケートの存在は宙吊りにされてしまっていることでしょう。彼女たちは(とくにヘルは)母娘のあり方の問い直しに関わってくるキャラクターではありながら、それを深く描写している時間的余裕はなかったのでしょう、物語を引っ掻き回すだけに終始してしまった。ですがこの難点についても、"そのままでよし"へと接続させることができることでしょう。つまり、ヘケートもまたはじめから彼女自身でありそのことは変えようがないわけです。彼女ははじめからそのことに気づいていたことになってしまうので面白みは半減してしまうかもしれませんが笑

それでも救済しきれない問題はプラスチックでしょうか。彼は心がながらく未熟だったのですがドタバタのなかで急成長するというキャラクターですが、少し考えれば分かる通りこの筋書きはかなり規範的ですし、現代の観点からすればそのくだりを物語上での箸休めとしてのお笑い要素に組み込んでしまっていることは批判を免れえません。

 

全体的に見れば、ストーリーの展開もテンポよく、かと言って追いつけないというわけでもなく、「楽しい」舞台だったと言えると思います。

随分上から目線でここまでつらつらと書いてきたわけですが、許してください。え?許してくれない?そんなら、この人に登場してもらいましょうか。

 

「悪魔の娘よ!文句ある?」

 

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